生前贈与を遺産分割に含めないやり方

相続人への生計の基礎として役立つ

財産上の給付は

生計の資本としての贈与、

「特別受益」に該当し、

被相続人の相続財産に加算して

具体的相続分の計算をします。


相続財産の前渡しだと思ってください

他の相続人との公平を図るための制度で、

被相続人だったら普通公平にするだろうと

いう合理的意思を推測しての算定方法です。


詳しくはこちら「遺産分割と特別受益」


被相続人の方が、

「いや、この贈与は遺産分割に含めない」

という特別意思があるならば、

それはそれで、そちらを尊重しよう!

ということで、

贈与を遺産分割の際、相続財産の計算に含めない

「特別受益の持戻し免除」

も可能です。

この場合、相続時にあった財産のみで遺産分割

になります。



贈与の場合は、

持戻免除の意思表示は、

どんな方法(口頭、黙示含む)も可ですが

やはり、

書面に残しておくことが大事です。


・贈与契約書に併せて記載しておく

・別の書面に残しておく

・遺言を書く

等々が方法としてあります。


より証拠能力を高めておくため、

公正証書にしておく場合もあります。


遺産分割の際は、特別受益に該当する贈与は

特別受益の持戻し免除をすれば、

具体的相続分の計算の際全く算入しませんが

遺留分侵害額の計算においては、

持戻し免除をしても参入しなければなりません


例えば、

相続人2名(子A、子B)

相続開始時財産 預金 1000万円

9年前子Bに特別受益に該当する贈与5000万円

(被相続人が特別受益の持戻し免除)


具体的相続分(持戻免除の5000万円参入×)

 子A 1000万円×1/2=500万円

 子B 1000万円×1/2=500万円


持戻し免除のため、特別受益は考慮されず、

遺産分割での子A、子Bは

相続開始時にあった預金1000万円

を500万円ずつ均分で分けることになります。


おーすごい 

持戻し免除


これでは、あまりにも不公平なので、

特別受益は

遺留分の計算の際にはちゃんと計算します。


子Aの遺留分

(預金1000万円+特別受益5000万円)×1/2×1/2

=1500万円


子Aの遺留分侵害額

 1500万円−500万円(遺産分割で取得すべき分)

 =1000万円


子Aは子Bに対し少なくとも1000万円

遺留分侵害額請求して回収することはできます。



特別受益は、

被相続人の合理的意思の推測と相続人間の公平
という観点から、

相続財産に持戻して具体的相続分するが、


被相続人が特に遺産に含めないとしたときは、

「特別受益の持戻し免除」が可能です。

ただし、あくまで、

持戻し免除は遺産分割の場合です。


兄弟姉妹相続以外の相続人に認めれらている
最低保証制度の「遺留分侵害額請求」

をされた場合は関係ありません。

たとえ持戻免除の意思表示をしたとしても、

遺留分の計算に算入されてしまいます。

というお話でした。


では、遺留分侵害額請求の場合は

どんな特別受益の贈与でも

算入しなければいけないかは、

次回です。


川崎市麻生区とそれに隣接する稲城市で

生前贈与と特別受益の持戻免除といったらの

司法書士田中康雅がお届けしました。





























相続財産は

不動産2000万円

預貯金3000万円

相続人は配偶者と子ABの3人。

さあ、遺産分割をしよう。

その遺産分割ちょっと待った!

被相続人から子Bが

住宅購入資金として生前1000万円

もらっているのをお忘れではないですか。

生計の基礎として役立つ財産上の給付は

生計の資本としての贈与として

「特別受益」に該当し、

被相続人の相続財産に「特別受益」を

加算し、法定相続分を乗じる必要があります

加算した特別受益分は、法定相続分で乗じた後

実際受け取った者から控除します。

具体的相続分

配偶者 (5000万円+1000万円)×1/2=3000万円

子A   (5000万円+1000万円)×1/4=1500万円

子B  (5000万円+1000万円)×1/4

     −1000万円       = 500万円

結果

配偶者 遺産分割により不動産と預金1000万円

    の合計3000万円

子A   遺産分割により預金1500万円

    の合計1500万円

子B   遺産分割により預金 500万円

    生前に住宅資金贈与1000万円

    の合計1500万円

になります。

この相続人への生計の資本としての贈与

「特別受益」は

相続開始前3年、10年

いや何年でもさかのぼって参入可能です。

(cf遺留分侵害請求は改正により原則10年)

あまりにも詳細まで突き詰めると、

どこまでが特別受益になるか、金額はいくらか

等々

遺産分割がまとまらないことも。

ですので、

特別受益を遺産分割のステージに上げる場合は

細心かつ慎重に行ってください。

 

もちろん

特別受益に該当し

遺産分割は、

相続人が合意していれば、

どのように分けても問題ありません。

(私的自治の原則)

極端な話、

配偶者全部、子ABは0円の遺産分割も可能です。

したがって

遺産分割協議は、

当事者の合意≧特別受益を考慮した具体的相続分

結局

特別受益を遺産分割でどう扱うか。

相続人のみなさん次第というお話でした。

次回は特別受益の持戻し免除になります。

司法書士田中康雅

司法書士田中康雅事務所(川崎市麻生区新百合ヶ丘稲城市の相続手続登記相談)

川崎市麻生区新百合ヶ丘、稲城市で無料相続相談、相続登記・信託・贈与・遺言等相続手続中心に司法書士業務経験30年目。税理士事務所勤務で相続税贈与税を経験し2000年開業。相続全般の知識経験と相続ネットワークでの相続対策や遺産分割、配偶者2次相続対策を行う司法書士田中康雅事務所は新百合ヶ丘駅徒歩5分、稲城市若葉台車で10分。「3訂版相続相談標準ハンドブック」(日本法令)発売中

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