認知症対策で自宅を信託している方は、空家特例にご注意を
自宅を売って老人ホーム等施設に入
居を考えている皆さんは、
売却の際、判断能力がない場合は、
成年後見制度等を利用しないと売れないことはご存じだと思います。
ただ、一旦成年後見制度を利用すると、一部の例外を除き、途中でやめることができません。
また、後見人の管理下に置かれ、財産の自由がきかなくなります。
できれば成年後見制度を使いたくない
世間ではそんな声が多くありました。
そこで、登場したのが、
「認知症対策としての民事信託」
(信託銀行等が行う商事信託や投資信託とは違います)
万一認知症になっても売却できるよう
委託者兼受益者を自宅所有者、
子や親族等を受託者、
信託の終了事由を委託者の死亡、
最終的な財産帰属者を相続人とする、
信託契約。
(この信託は贈与税がかかりません)
上記の信託なら、
認知症になって自宅を売却してから施設に入る場合でも、受託者から売れます。
(基本的には譲渡所得税の3000万円の特別控除が使えます)
ずっと元気ならばそのまま居住し、
亡くなった場合は信託は終了。
そして、
信託契約で決めておいた財産帰属者へ
この信託終了による財産帰属者への移
転は、相続税法上は遺贈とみなします
この信託スキームは生前認知症になっても成年後見を使わず自宅を処分することができ、
かつ
死亡後のことは、遺言と同じように生前に決めることができる、
という非常にいい制度です。
ところで、
認知症を発症せず、そのまま一人で住んでいた場合、亡くなれば空家となります。
財産承継者は空家を売ろうと考えるかもしれません。
通常、相続等により取得した空家で、昭和56年5月31日以前に建築された空家(区分建物を除く)であれば、相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと場合、譲渡所得税に関して、一定要件のもと、空き家の3000万円特別控除が使えます。
(国税庁ホームページ)
ところが
東京国税局は令和4年12月20日、
信託と空家特例との関係で次のような回答をしました。
「信託契約終了により帰属権利者が取得した被相続人の居住用家屋等について空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除は不適用」
認知症対策として信託契約をした(これから信託をする)皆さん、認知症になっても生前に自宅を処分できるようにしてすることはもちろん大切なことです。ただ、空家特例が使えなくなったときの長期譲渡所得税の税率は22.1%です。決して低い数字ではありません。ほとんど売らないけれど、万が一のためだけに信託をしている場合には、費用対効果の上では、信託を組まないという選択肢もこれからはでてくるのではないかと感じています。
自宅を信託されていて方は、信託契約の内容を再度確認していただき、場合によっては信託の際依頼された専門家の方にご相談していただくのがいいと思います。
川崎市麻生区新百合ヶ丘・稲城市の相続専門事務所
司法書士田中康雅事務所
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