お母様の「生活」を守りつつ、2次相続の「穴」を保険で埋める(想定例)
1次相続でお母様の生活を守り、2次相続で長男に足りなくなる現金(代償金)の穴を、生命保険で埋める。その流れを、想定例の数字で見ていきます。
「子どもたちのために相続対策を」と言っても、お母様のこれからの生活が犠牲になっては本末転倒です。お母様の安心を大前提に、生命保険を「現金の置き場所」としてどう使うか。具体的な例で見ていきましょう。
この記事の内容
・想定例 父から1,000万円を相続した家族
・手順1 お母様の「生活防衛」を確かめる
・手順2 預金の半分(500万円)に「色」を塗る
・結果 2次相続で発生する「大きな穴」を埋める
・この判断例の分かれ道
・あわせて読む
・まとめ
想定例 父から1,000万円を相続した家族
お母様の財産(1次相続の直後)は、次のとおりです。
- 家族構成:母・長男(同居)・次男(独立)の3人
- 不動産:自宅3,000万円(長男が継ぐ予定)
- 現金:1,000万円(お父様の遺産をお母様が相続)
- うち500万円:生活費として手元に確保(預金のまま)。2次相続の時点では、生活費・医療費などで使い切った前提
- うち500万円:対策の分かれ目(対策なし=預金のまま/対策あり=保険に変える)
長男には、相続とは関係のない固有の財産として、預金1,000万円(自身の貯蓄)があります。この1,000万円が、2次相続で資金が足りるかどうかの分かれ目になります。 読み物用の想定例です。年金の額、生活費、不動産の評価、預金の残高によって、最適な形は変わります。生活費として確保した500万円は、2次相続の時点でお母様の生活費・医療費などに充てて使い切っているものとします。このため、2次相続の遺産の計算には含まれません。
手順1 お母様の「生活防衛」を確かめる
まずは、お母様がこれから一生お金に困らないかを確かめます。「自分のお金がなくなるかも」という不安がある状態では、よい対策はできません。
- 住まい:自宅はローンなし。住む場所の心配はありません
- 毎月の収支:遺族年金とご自身の年金で、月々の支払いは黒字でやりくりできている
- 手元の予備費:相続した1,000万円のうち、500万円は「預金」として残す。入院やリフォーム、旅行など、自由に使える余白を残します
「遺族年金がいくらになるか」は、お父様のご存命中に「ねんきんネット」などで目安を確かめられます。先にお母様の将来の収入(見込み)が見えると、生活防衛の判断が一気に楽になります。
手順2 預金の半分(500万円)に「色」を塗る
お母様の生活費を守ったうえで残る、余剰資金500万円。これをそのまま銀行に置いておくのではなく、生命保険という形に変え、受取人を「長男」に指定します。
ここでの狙いは、得することではなく、「この現金は、将来、家を守りきるための原資(代償金)に回す」と、役割をはっきりさせることです。
これが、2次相続で発生しやすいトラブルを未然に防ぐ、いわば「現金の予約」になります。代償金と生命保険の関係は、別の記事にまとめています。
結果 2次相続で発生する「大きな穴」を埋める
お母様が亡くなったとき(2次相続)、家を継ぎたい長男には「次男に支払うための現金(代償金)」という大きな壁が立ちはだかります。保険に入ると何がどう変わるのか、3つの手順で確かめます。 下の図は、対策なし(預金のまま)と対策あり(保険に変える)で、2次相続の遺産、代償金、長男が自力で用意する額がどう変わるかを、3つの手順で並べたものです。
対策なし(預金のまま)
- 遺産分割の対象:3,500万円(自宅3,000万円+預金500万円)
- 分け方:自宅は長男へ、預金500万円は次男へ
- 代償金:1,250万円(次男の取り分1,750万円−受け取った預金500万円)
- 長男が自力で用意する額:1,250万円。手元の固有の預金1,000万円では、250万円足りない
対策あり(預金500万円を保険に変える)
- 遺産分割の対象:3,000万円(自宅のみ。預金500万円は保険に変えた)
- 分け方:自宅は長男へ。現物で分けられる預金はない
- 代償金:1,500万円(自宅3,000万円の半分)
- 長男が自力で用意する額:1,000万円。保険金500万円が長男に直接届くので、手元の固有の預金1,000万円でちょうど賄える
対策なしの場合、次男は遺産から預金500万円を現物で受け取ります。そのため長男が払う代償金は、1,750万円の残りの1,250万円ですが、固有の預金1,000万円では250万円届きません。売却か共有かの選択を迫られやすい状態です。 一方、500万円を保険に変えると、次男が受け取れる現物の預金はなくなるかわりに、代償金は1,500万円になります。ただし保険金500万円が長男に届くので、実際に自力で用意する額は1,000万円まで圧縮されます。これが固有の預金1,000万円とちょうど一致し、資金の不足なしで家を引き継げる計算です。 なお、この形では、次男が受け取る額は1,750万円から1,500万円に減ります。保険で埋めているのは長男の資金の穴であって、公平の問題が消えるわけではありません。なぜこの形にするのかを、お母様自身の言葉で次男に伝えておくことが、2次相続を穏やかに進める鍵になります。
生命保険は、単なる「得する保険」ではありません。「お母様のいまの安心」と「子どもたちの将来の安心」を両立させるための、整理整頓の道具です。
生命保険は、分け方(代償金)の調整だけでなく、ケースによっては相続税の申告が不要になる方向に働くこともあります。
生命保険で「相続税の申告が不要」になることがある?|非課税枠の“本当の効き方”
この判断例の分かれ道
この例の答えは、順番です。1次相続で守るのはお母様の生活、2次相続で埋めるのは長男の代償金の穴。生活費を先に確保し、余った分だけを保険に変えました。 本当に詰まるのは、お母様の生活費がいくら残るかが見えないまま、対策の話が先に進むことです。分かれ目は3つあります。余剰資金がいくらあるか。家を継ぐ人の手元に、代償金の原資がどれだけあるか。そして、次男がその形に納得できるか。数字が同じでも、この3つで選ぶ道は変わります。 ほかのご家族がどう決めたか、そして自分たちは何を決める必要があるかは、次の2つのページに整理しています。
あわせて読む
生命保険の整理と活用|非課税枠・納税資金・代償金・受取人の整理
生命保険の「非課税枠」をどう活かす?|相続税の節税を“やりすぎない”基本整理
特別受益と生命保険|平成16年最高裁で分かる「持ち戻し」の原則と例外
まとめ
1次相続では、お母様の生活を先に守る。住まい、毎月の収支、手元の予備費の3つを確かめ、余った分にだけ「色」を塗ります。 2次相続では、家を継ぐ人が払う代償金の穴を、受取人を指定した生命保険で埋める。保険金は遺産分割の外で直接届くので、自力で用意する額を減らせます。 生前・2次相続まで見ておくと、相続はぐっと進めやすくなります。誰に、どんな思いで残したいか。そこを大切にしながら、いまできる整え方を一緒に考えます。初回のご相談は無料です。
0コメント