相続開始後、相続人が預金を引き出して使ってしまった場合 ─ 遺産分割・精算での実務対応
相続が開始した後、相続人の一人が、キャッシュカード等で引き出し、勝手に消費してしまったケースです。
遺産分割の対象は、原則遺産分割時にある財産です。ということは、遺産分割前に処分してしまった財産はどうなるのでしょうか。遺産分割にどう影響するのか。
被相続人の財産については、相続人であっても、法定相続分以上の権利はないので、不当利得返還請求等、遺産分割とは別にすすめます。不当利得とは、本来利益を受けるはずだった人が法律上の根拠なく不当に利得を得た人に対し利得の返還を求めるものです。証拠をそろえる必要があり、裁判になる場合は、弁護士の先生にお願いすることになります。
遺産分割の対象財産は、相続時の預金2000万円ではなく、分割時にある預金1800万円です。
相続開始後引き出して使ってしまった預金200万円は、原則遺産分割対象となりません。したがって、相続人である母が法律上の理由なく、法定相続分以上(今回は100万)使っているとして、子が母に100万不当利得返還請求をします。これは、遺産分割と別手続きです。実際はなかなか大変な作業です。
もちろん、
当事者間で話し合いできる場合は 遺産分割協議の中で解決できる場合もあります。
実務では、遺産分割前に使ってしまった相続財産については、それを考慮のうえ、遺産分割協議することが多いです。法律が実務に追い付いていなかったのですが、ようやく2019年7月1日民法906条の2で明文化され、遺産分割前に処分されあた相続財産も処分した相続人以外全員が同意すれば遺産分割時の相続財産とみなして、遺産分割ができるようになりました。
これにより、相続時と遺産分割時の預金額を同じ額にすることが可能となり、相続人間の精算がしやすくなります。遺産分割の前に預金を引き出して、そこから未払金を払ったり、葬式費用を出したり、その中で相続人が自己消費したり、相続開始から遺産分割協議までの間に預金額違う場合が多かったですから。
次回は、
遺産分割協議が終わった後、相続人が立て替えていた分をどのように精算するのか。等
遺産分割後の精算のお話をしたいと思います。
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