生前対策は「順番」で決まる|先に手を打てるかどうかが分かれる6つの場面
生前対策は、何をするかより、どの順番で整えるかで結果が変わります。遺言・生前贈与・民事信託・任意後見のどれを選ぶかの前に、先に手を打てるかどうかが分かれる6つの場面を整理します。
制度の比較から始めるものではありません。遺言にも贈与にも信託にも役割はありますが、組み合わせ方と時間軸(順番)で、結果は大きく変わります。 法と税に、暮らしと家族の想いもそえて、全体の順番から整える。個別の制度をおすすめする前に、まず順番を整える側に立ちます。この記事は、その考え方の説明です。ご相談の内容、進め方、費用は、生前・2次相続対策のご案内のページにまとめています。
この記事の内容
・なぜ「順番」で決まるのか
・先に手を打てるかどうかが分かれる、6つの場面
・2次相続まで見ておく
・本当に詰まるのは、制度を選ぶところではありません
・初回のご相談は無料です
なぜ「順番」で決まるのか
生前対策は、「作る時期」と「効く時期」が違います。遺言は、作るのはいまで、効くのは相続のとき。生前贈与は、いま渡して、相続のときにもう一度、税と法律で出てきます。民事信託(家族信託)は、いま財産を託して、判断能力が落ちたあとも動かせます。任意後見は判断能力が落ちたときに、遺言執行者の指定や死後事務委任は亡くなったあとに働きます。 下の図は、生前対策の「作る時期」と「効く時期」を、対策ごとに並べたものです。
- 遺言:作るのはいま。効くのは相続のとき
- 生前贈与:いま渡して、相続のときに効く(税の足し戻し、特別受益・遺留分)
- 民事信託:いま託して、判断能力が落ちても動かせる
- 任意後見・遺言執行者・死後事務委任:判断能力が落ちたとき、亡くなったあとに働く
- 2次相続対策:次の相続まで見て、いまの分け方を決めておく
どれも、作れるのは判断能力があるうちだけです。
ここが、順番で決まる理由です。判断能力が落ちてからでは、遺言も贈与も信託も任意後見も選べません。残るのは成年後見だけで、一度始まると本人が亡くなるまで続き、自宅の売却には家庭裁判所の許可が要ります。 もう一つ、あとから戻せないものがあります。贈与は、贈与した人ともらった人の合意がない限り、元に戻せません。共有にすれば当面は収まりますが、動かせない財産が残ります。先にした選択が、あとの選択肢を狭めることがあります。だから、何をするかより先に、どの順番でするかを決めます。
先に手を打てるかどうかが分かれる、6つの場面
ご相談の入口は「遺言を書きたい」「贈与をしたい」という形が多いのですが、お話をうかがうと、解きたい問題はもう少し手前にあることがほとんどです。実際によくある場面を、目的の側から6つ挙げます。ご自身に近いものから見ていただければ十分です。
1 配偶者のこれからを、先に確かめておく
生活資金は足りるか。名義はどちらにするか。 「とりあえず配偶者に」で決めると、2次相続で負担が増えることがあります。配偶者に財産が集まったまま次の相続が来ると、そのときに選べる手段はほとんど残っていません。住まいの安定と、次の相続の見通しを並べたうえで名義を決めます。足りない現金は、生命保険で埋める設計をとることもあります。 使う手段:遺言/生命保険/(必要に応じて)配偶者居住権・民事信託
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2 判断能力が落ちても、財産を動かせるようにしておく
自宅を売って施設費用にあてたい。そのときに売れるか。 名義人の判断能力が低下すると、売却も賃貸も担保設定もできなくなります。成年後見の申立てをすれば進められますが、一度始まると本人が亡くなるまで続き、自宅の売却には家庭裁判所の許可が要ります。その前に手を打てるかどうかが分かれ目です。民事信託や任意後見契約で、動かせる形を先に作っておきます。 使う手段:民事信託/任意後見契約/遺言
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3 分けにくい財産を、分けられる形にしておく
主な財産が自宅だけ。兄弟で分けようがない。 不動産が財産の大半を占めると、公平に分ける手立てがなくなります。共有にすれば当面は収まりますが、売るには全員の同意が要り、次の相続で持ち主がさらに増えます。代償金の原資を先に用意しておく、共有をいま解消しておく、といった準備で、あとの選択肢が変わります。 使う手段:生命保険(代償金の原資)/共有物分割・交換/遺言
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4 渡すなら、いつ・どの方法で渡すかを選ぶ
生前に贈与するのか、遺言で渡すのか。 贈与税がかからなければ安心、とはいきません。相続のときに、特別受益として持ち戻される場合がありますし、遺留分の計算に入ることもあります。そして贈与は、合意がない限り元に戻せません。遺言は一人で書き直せます。税の面と、あとで揉めないかという面の両方から、渡し方を決めます。 使う手段:生前贈与(暦年・相続時精算課税)/遺言/死因贈与
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5 もめる芽を、先に摘んでおく
一人に多く残したい。でも、あとで請求されないか。 遺言で全部を一人に、と書いても、ほかの相続人の遺留分は残ります。昔の援助が、特別受益として持ち出されることもあります。遺留分は、請求があって初めて動きます。誰に、なぜ、どう伝えるかまで含めて設計しておくと、同じ結論でも受け止め方が変わります。 使う手段:遺言(付言を含む)/生前贈与の組み立て/生命保険
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6 残された人が動けるようにしておく
近くに頼れる家族がいない。 遺言があっても、実際に手続きを進める人がいなければ動きません。入院や葬儀、住まいの片づけ、各種の解約。誰が担うのかを決めておくことも、対策のひとつです。遺言執行者の指定、死後事務委任契約、任意後見契約を組み合わせます。 使う手段:遺言執行者の指定/死後事務委任契約/任意後見契約
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6つは、ひとつずつ来ません
6つのうち、ひとつだけということは実はあまりありません。配偶者のこれからを考えると、認知症の備えも、分けにくい財産の話も一緒に出てきます。どれから手をつけるかを決めるところから、順番は始まります。
2次相続まで見ておく
生前の設計は「今」だけでは完結しません。1次相続で整えたつもりが、2次相続で逆転することがあります。税額の試算は税理士と連携して行い、そのうえで暮らしと想いを並べて判断します。 今回の相続を終えたばかりの方も、同じです。今回の相続で見えた課題を、次に持ち越さない。そこから生前対策が始まることも多くあります。
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本当に詰まるのは、制度を選ぶところではありません
遺言も贈与も民事信託も、決まれば手続きは進みます。実際に迷うのは、その手前です。自宅を誰に、いつ渡すのか。配偶者の暮らしをどこまで優先するのか。ほかのご家族にどう伝えるのか。どれも正解がひとつではなく、ご家族の事情で答えが変わります。
この判断は、相続税の計算とは別に動きます。税額が一番安い形が、ご家族にとって最善とは限りません。
何を決めなければならないかは相続の道筋地図に、ほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例にまとめています。
初回のご相談は無料です
「遺言を書いたほうがいいのか」「民事信託というものが気になっている」。その程度でかまいません。ご家族の状況と財産を並べて、何から手をつけるかを決めるところから始めます。ご依頼いただくかどうかは、方針と費用の説明をお聞きいただいたうえでお決めください。 ご相談の内容、進め方、費用は、生前・2次相続対策のご案内のページにまとめています。
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