遺産分割協議書に預金額を記載しないのですか?|金額と割合の使い分け

遺産分割協議書の預金は、金額でも割合でも書けます。ただし相続時2,000万円が手続時1,800万円になっているような場面では、割合で書くほうが手続きは進めやすくなります。

 【本文】 遺産分割協議書に預金を書くとき、金額で書くのか、割合で書くのかで迷うことがあります。 結論からいえば、預金が特定できれば、金額でも割合でも構いません。ただし、預金は相続開始後に引落しや払戻しが入ることがあり、相続時の残高と、金融機関で手続きする時点の残高がずれることがあります。 このページでは、金額記載と割合記載の使い分けを中心に整理します。相続開始後に引き出して使ってしまった場合の法律上の整理と、合意したあとの具体的な数字合わせは、それぞれ別の記事で整理しています(記事の後半でご案内します)。

この記事の内容
・まず結論 ・なぜ預金の書き方だけ迷いやすいのか
・記載方法 できるだけ特定して書くのが基本
・金額記載と割合記載の基本
・具体例 相続時2,000万円、手続時1,800万円のケース
・割合記載が向いている場面
・金額記載を使うなら気をつけたいこと
・協議書で一緒に決めておきたいこと
・最後の精算は別に考える
・預金の書き方で、分かれるところ
・あわせて読む
・まとめ 

まず結論 

 【箇条書き】※3行を選択して箇条書きの書式を当てる。各行の「:」の前だけを太字にする 

  • 金額でも割合でも書ける:預金が特定できれば、どちらで書いても構いません
  • 残高が動く場面は割合が便利:引落しや払戻しで残高が変わっていても、金融機関の手続きが進めやすくなります
  • どの時点の残高かを合わせる:割合だけだと基準の時点がずれやすいので、相続人の間で前提を共有しておくことが大切です  

なぜ預金の書き方だけ迷いやすいのか

不動産は「この土地」「この建物」と特定して書けば足ります。ところが預金は、同じ口座でも、死亡日の残高と払戻しの手続きの時の残高が違うことがあるため、書き方の問題が出やすくなります。

 【箇条書き】※3行を選択して箇条書きの書式を当てる。各行の「:」の前だけを太字にする 

  • 遺産分割協議:誰がどれくらい取得するかという、帰属を決める問題
  • 金融機関の手続き:その時点で払い戻せる残高を、どう配分するかの問題
  • 相続税の申告:税金の計算のために、相続開始時点の評価額を使う問題 

この3つは目的が違うので、同じ預金でも見え方がずれることがあります。 

 記載方法 できるだけ特定して書くのが基本 

 預金を協議書に記載するときは、どの預金かが分かるように特定して書くのが基本です。 【箇条書き】※4行を選択して箇条書きの書式を当てる 

  • 銀行名
  • 支店名
  • 口座の種別(普通・定期など)
  • 口座番号 

「預貯金一切を○○が取得する」という概括的な記載も、法律上ただちにできないわけではありませんが、あとで対象の預金の確認が必要になる場合があるため、実務上は注意が必要です。できるだけ特定して書くのが望ましい一方で、ご家族の状況に応じて記載方法を調整することもあります。 

金額記載と割合記載の基本

 【箇条書き】※2行を選択して箇条書きの書式を当てる。各行の「:」の前だけを太字にする 

  • 金額で書く:直感的に分かりやすい書き方です。ただし残高が動いている場面では、どの時点の金額かまで意識しておく必要があります
  • 割合で書く:残高が変わっても、金融機関の手続きは進めやすい書き方です。どの時点の預金を前提にした割合かを補っておくと安心です 

具体例 相続時2,000万円、手続時1,800万円のケース

次のような例で考えます。

  • 相続開始時の預金残高:2,000万円
  • 手続時の預金残高:相続開始後に200万円が動き(引き出し・口座引落しなど)、金融機関の手続きの時は1,800万円
  • 取得の割合:母と子で、6:4と合意 

 相続税の申告では、相続開始時の2,000万円を前提に、母1,200万円・子800万円と整理しやすいですが、金融機関が実際に払い戻すのは、手続きの時に残っている1,800万円です。 下の図は、この例で、協議書・金融機関の手続き・相続税の申告の数字を並べたものです。 

  【箇条書き】※3行を選択して箇条書きの書式を当てる。各行の「:」の前だけを太字にする 

  • 遺産分割協議書:割合で書く(母6/10・子4/10)。どの時点の残高を前提にした割合かも共有しておく
  • 金融機関の手続き:手続時の残高1,800万円を分ける。母1,080万円・子720万円
  • 相続税の申告:相続開始時の2,000万円で計算する。母1,200万円・子800万円

協議書・金融機関の手続き・相続税の申告で、同じ数字にならないことがあるわけです。

 【本文】 無理に1枚で全部そろえようとすると、かえって分かりにくくなります。役割を分けて考えます。 

割合記載が向いている場面 

残高が動いている場合は、協議書では取得の割合で書いておくと、金融機関の手続きが進めやすいことがあります。上のケースなら「母が6/10、子が4/10を取得する」としておき、払戻しは1,800万円に対して母1,080万円・子720万円という形になります。 ただし、割合だけでは、「相続時の2,000万円を6:4で考えるのか」「分割時の1,800万円を6:4で考えるのか」が、あとでずれやすくなります。どの時点の預金を前提にした割合かを、相続人の間で共有し、協議書にも書き添えておくと安心です。相続税の申告がある場合は、特に大切です。 

金額記載を使うなら気をつけたいこと 

「母1,200万円、子800万円」のように金額で書くと、直感的に分かりやすいです。ただし、残高が変わっている場合、固定額だけだと、そのままでは手続きが進みにくいことがあります。 実務上は、たとえば「母が1,200万円を取得し、残額のすべてを子が取得する」という形で、一方を固定額、他方を残額全部とする書き方のほうが、残高の変動がある場面ではなじみやすいことがあります。 ただし、この書き方では、残高の増減は、残額を取得する人にすべてかかります。この例で「母が1,200万円、残額を子」とすると、手続きの時の残高は1,800万円なので、子が取得するのは600万円です。どの預金を対象にするのか、残額とはどの時点の残高を指すのかが読み取れるようにしておくことが大切です。 

協議書で一緒に決めておきたいこと 

金額か割合かだけでなく、実務では次の点も合わせて決めておくと、あとのずれがかなり減ります。 

  • どの時点の残高を前提にしているか
  • 相続開始後の引落し・払戻し・自動支払をどう扱うか
  • 相続開始から分割時までの利息をどう扱うか
  • 残高の差や、先に取得した分がある場合、最後にどう精算するか 

相続開始時までの既経過利息は、元本の帰属に従って処理する前提で協議書に盛り込み、相続開始後から遺産分割までの利息や端数については、誰が取得するのかを協議書で定めておくと、手続きや精算が進めやすくなります。 相続税の申告がある場合に、相続開始時の残高を前提にどう書くかは、預金から葬儀費用を払った事例で、次の記事に記載例をまとめています。 

葬儀費用を預金から払ったときの遺産分割協議書|相続開始時の残高で書く理由と記載例 


協議書で誰がどれくらい取得するかを決めても、それだけで最終的な数字合わせが終わるとは限りません。相続開始後の引落し、先に使ったお金、現金の存在などがある場合は、最後に別途の精算が必要になることがあります。 下の図は、この例で動いた200万円が、母が自分のために使ったものだった場合に、最後にどう精算するかを示したものです。

  • 母:先に使った200万円と、払戻しの1,080万円で1,280万円。目安の1,200万円(2,000万円の6割)より80万円多い
  • 子:払戻しの720万円。目安の800万円(2,000万円の4割)より80万円少ない
  • 精算:母から子へ80万円を払い、母1,200万円・子800万円にそろえる

 動いた200万円が何に使われたか(自分のためか、亡くなった方のための支払いか)で、精算が要るかどうかが変わります。精算するときは、その80万円も協議書に書いておきます(協議の外で渡すと、相続人の間の贈与と見られることがあります)。最後の数字合わせは、次の記事で具体例を使って整理しています。

 相続後の預金の分け方|引出済み・解約後の精算方法を具体例で解説 


預金の書き方で、分かれるところ 

書き方の答えは、はっきりしています。預金が特定できれば、金額でも割合でも書けます。残高が動いているなら、割合で書くほうが手続きは進めやすくなります。 本当に詰まるのは、どの時点の残高を前提にするかで、家族の受け止め方が分かれることです。相続開始時の2,000万円で考えるのか、手続きの時の1,800万円で考えるのか。先にお金を使った人がいれば、なおさらです。 判断が分かれるのは、割合で書いて最後に精算するか、固定額と残額で書いて増減を一人に寄せるか、という点です。全体の流れの中でいまどこを考えているかは相続の道筋地図で、似た状況でほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例で確かめられます。 

相続の道筋地図 

相続の判断例 

 

あわせて読む 

 【箇条書き】※3行を選択して箇条書きの書式を当てる。各行の「:」の前だけを太字にする 

  • 使ってしまった場合:争いがある場合や、みなし遺産の考え方など、法律上の整理です
  • 預金の整理の全体像:相続開始前・死亡当日・相続開始後の時間の流れで、見る記事を振り分けています
  • 相続開始後(法律編):相続人の引き出し、遺産分割の対象、精算の考え方を全体で整理しています

相続開始後、相続人が預金を引き出して使ってしまった場合 ─ 遺産分割・精算での実務対応 

相続開始前後・当日の預金の整理|相続で迷いやすいお金の動きを時間の流れで整理  

相続開始後の預金の引き出し(法律)|遺産分割の対象・みなし遺産・精算の考え方 

 

まとめ 

  • 金は特定できれば、金額記載でも割合記載でもよい
  • 銀行名・支店名・種別・口座番号まで特定して書くのが望ましい
  • 残高が動いている場面では、割合記載のほうが金融機関の手続きは進めやすい
  • 金額記載を使うなら、固定額と残額全部の組み合わせも検討しやすい。ただし増減は残額を取得する人にかかる
  • どの時点の残高を前提にしているかを、相続人の間で合わせておくことが大切
  • 利息・端数・引落し・差額の精算まで見越して書くと、実務が安定しやすい
  • 協議書の書き方と最後の精算は、別々に考えると整理しやすい 

 金額で書くのがよいか、割合で書くのがよいかは、残高が動いているか、相続税の申告があるか、相続人の間の合意の状況によって変わります。相続税が関係する場合は、税理士と連携して整理します。どの書き方が合うか迷う段階でも、ご相談いただけます。初回のご相談は無料です。す。

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