住所変更登記の義務化と「検索用情報の申出」「スマート変更登記」
2026年4月1日から、住所・氏名の変更登記も義務になりました。変更から2年以内。施行前の引っ越しも対象で、期限は2028年3月31日です。
2024年4月の「相続登記の義務化」に続き、不動産の所有者の住所・氏名(名称)の変更登記も、2026年4月1日から義務になりました。法人が所有する不動産も対象で、商号(名称)や本店(主たる事務所)が変わった場合には対応が必要です。 この負担を軽くする仕組みが「スマート変更登記」です。個人向けの事前の手続きである「検索用情報の申出」は、これに先立つ2025年4月21日から始まっています。法人には、会社法人等番号を利用する別の仕組みがあります。 聞き慣れない制度なので、「何をすると何がラクになるのか」を、個人と法人に分けてまとめます。
まずここだけ
不動産の所有者の住所・氏名(名称)の変更登記は、2026年4月1日から義務です。変更から2年以内の申請が原則です
2026年4月1日より前の住所・氏名(名称)の変更も対象です。期限は、原則2028年3月31日です
検索用情報の申出は個人向けです。法人は、不動産の所有権の登記に会社法人等番号が記録されているかを確認します
スマート変更登記では、個人は本人の了解を得て、法人は商業・法人登記との連携により、法務局が職権で変更登記をします
会社の商号変更・本店移転の登記は原則2週間以内です。不動産の「2年以内」とは別の期限です
この記事の内容
・住所変更登記は、何が変わる?
・こんな方が対象になります
・なぜ新しい制度が作られたのか
・検索用情報の申出とは
・スマート変更登記とは
・法人の商号・本店が変わった場合は
・相続の場面ではどうなるか
・相続登記の義務化と比べると
・費用の目安
・まとめ
住所変更登記は、何が変わる?
これまで、引っ越しや婚姻などで住所・氏名が変わっても、登記を直すのに「期限」はありませんでした。ところが、2026年4月1日以降は、変更から2年以内に申請することが原則となり、正当な理由なく放置すると過料(5万円以下)の対象になり得ます。
施行前の変更は、原則2028年3月31日まで
2026年4月1日より前に住所等が変わっていて、まだ登記を直していない場合も義務化の対象です。この場合の期限は、原則2028年3月31日です。法人の商号変更・本店移転による不動産登記の変更についても同様です。 なお、検索用情報の申出や会社法人等番号の登記を済ませ、職権による変更登記を待っている場合の取扱いは、後の章で説明します。
こんな方が対象になります
「自分は関係あるのだろうか」と思われた方は、次のどれかに当てはまらないかご確認ください。
家を買ったあとに引っ越した(住民票は移したが、登記簿はそのまま)
結婚・離婚で氏が変わった
相続した実家をご自身の名義に登記したあと、ご自身の住所が変わった
法人で不動産を所有しており、商号(名称)を変更した、または本店(主たる事務所)を移転した
投資用や別荘などの不動産を持ち、登記後に住所や氏名が変わっている
住居表示の実施や町名変更など、住所の表記だけが変わった場合も、登記の確認はしておくと安心です。ただし、行政区画の変更等による住所の変更は、申請しないことについて一般に「正当な理由」が認められる場合とされています。通常の転居と同じように、一律に過料につながるものではありません。
なぜ新しい制度が作られたのか
住所変更登記は、正直「忘れやすい」手続きです。不動産を持っている方でも、引っ越しのたびに登記のことまで意識できるとは限りません。会社の本店を移した場合も、会社の登記は済ませたのに、不動産の登記が古いまま残ることがあります。 そこで、申請漏れを減らし、所有者の負担を軽くするために、法務局が公的な情報から変更を確認して登記を直す仕組みが設けられました。 下の図は、住所等変更登記をめぐる制度の流れを、個人と法人に分けて並べた時系列の図です。
検索用情報の申出とは
ひとことで言うと、「法務局が“同一人物かどうか”を照合できるように、先に手がかり情報を預けておく制度」です。
検索用情報の申出は、自然人(個人)を対象とする制度で、法人は利用できません。国内に住所を有する個人が、生年月日や氏名の振り仮名など、住基ネットで本人を確認するための情報を申し出ます。
- 対象は、不動産の所有者として登記されている個人です。これから所有者になる登記の申請と併せて申し出る場合もあります
- 目的は、将来、住所等の変更が起きたときに、法務局が住基ネット等で照合しやすくすることです
- 申出を済ませておくと、次に説明する「スマート変更登記」を利用できます(海外居住者を除きます)
検索用情報を申し出ただけで、その場で登記簿の住所が変わるわけではありません。
ただし、単なる準備にとどまる制度でもありません。申出を済ませ、法務局による職権登記の手続きを待っている場合は、一般に登記申請をしない「正当な理由」が認められます。毎回ご自身で変更登記を申請する負担を軽くし、義務違反を避けるための仕組みです。 法務局から変更登記をしてよいか確認が届いたら、期限内に回答してください。拒否したり回答しなかったりすると、別途、変更登記を求められることがあります。
スマート変更登記とは
スマート変更登記は、法務局が住所等の変更を確認し、登記官が職権で変更登記をする仕組みです。個人の場合は、本人の了解を得て行います。
まず、個人の場合の流れを説明します。法人の仕組みは次の章で取り上げます。
- 所有者が「検索用情報の申出」をしておく 法務局が(一定のタイミングで)住基ネット等により住所等の変更を確認する
- 法務局から本人へ連絡・確認が入り、了解が得られた場合に限り 登記官が職権で住所等変更登記を実施する
ここは誤解が多いので注意です
スマート変更登記は便利ですが、「引っ越したら自動で即日反映」ではありません。
そして、売却・担保(融資)などで急ぐ場合には、結局、通常の住所変更登記を申請して進める場面も出ます。運用の細部は、公式案内の更新を見ながら確認するのが安心です。
法人の商号・本店が変わった場合は
会社などの法人が土地や建物を所有している場合も、住所等変更登記の義務化の対象です。会社名を変えた場合は「名称」の変更、本店を移した場合は「住所」の変更として、不動産の登記にも対応が必要です。
会社の登記と、不動産の登記を分けて確認します
商号変更・本店移転をしたときは、次の2種類の登記を確認します。
- 商業・法人登記:会社そのものの商号や本店を変更する手続きです。株式会社などの会社では、原則として変更が生じた日から2週間以内に申請します
- 不動産登記:会社が所有する土地・建物について、登記名義人の名称や住所を変更する手続きです。2026年4月1日からは、原則として変更日から2年以内の申請が必要です
たとえば「株式会社さくら」が「株式会社あおば」に商号を変更した場合、同じ会社が引き続き不動産を所有しているので、不動産では登記名義人の「名称変更」を扱います。本店を移した場合は「住所変更」です。 会社の登記を済ませたあと、不動産についてスマート変更登記を利用できる状態か、通常の変更登記の申請が必要かを確認します。不動産の期限が2年だからといって、会社の登記も2年間待てるわけではありません。
法人のスマート変更登記に必要なのは、不動産の所有権の登記に「会社法人等番号」が記録されていることです。
検索用情報の申出は個人向けなので、法人は申し出ることができません。法人では、会社法人等番号を手がかりに、商業・法人登記と不動産登記を結び付けます。 以前の不動産登記の申請書に会社法人等番号を書いたことがあっても、不動産登記簿の所有権の登記事項として番号が記録されているとは限りません。申請書の控えだけで判断せず、登記事項証明書などで確認します。
以前から持っている不動産には「法人識別事項の申出」
2024年4月1日の時点で既に所有権の登記名義人となっていた法人で、法人識別事項が未登記の場合は、「法人識別事項の申出」によって会社法人等番号などを追加してもらうことができます。
- 書面またはオンラインで申し出ることができます
- 申出の手続きに押印・電子署名は不要です
- 申出による法人識別事項の登記に登録免許税はかかりません
- 既に法人識別事項が登記されている場合、この申出は不要です
2024年4月1日以降に、会社法人等番号を有する法人が新たに所有者となる登記を申請する場合は、会社法人等番号も登記されるため、追加の申出は不要です。 特に、2024年3月31日以前から法人名義で持っている不動産は、番号の記録の有無を確認しておくことをお勧めします。複数の土地・建物を所有している場合は、それぞれ確認します。 なお、会社法人等番号を持たない法人についても、設立準拠法国などの法人識別事項を申し出る制度はありますが、それによってスマート変更登記を利用できるわけではありません。
法務省:所有権の登記名義人による法人識別事項(会社法人等番号等)の申出について
法人の職権登記は、本人への意思確認を経ずに行われます
会社法人等番号が不動産の所有権の登記に記録されていれば、法人のスマート変更登記の対象になります。基本的な流れは次のとおりです。
- 会社が、商号変更や本店移転の商業・法人登記を申請します
- 商業・法人登記の情報が、会社法人等番号を通じて不動産登記のシステムに伝わります
- 法務局が変更を確認し、順次、不動産の登記名義人の名称・住所を職権で変更します
個人と異なり、法人のスマート変更登記では、変更してよいかの意思確認も、完了の連絡もありません。
法人について実際に職権で変更登記を行う取扱いは、2026年5月15日から始まっています。既に商業・法人登記の変更が済んでいる場合も、会社法人等番号の記録などの条件が整えば対象になります。 会社法人等番号が未登記のままでは、この連携の対象になりません。会社の本店移転登記だけを済ませて安心せず、不動産登記側の番号を確認することが大切です。
売却などで急ぐ場合と、対象外の場合
スマート変更登記は、会社の変更登記と同時に完了するものではありません。不動産の売却や担保設定を急ぐ場合は、反映状況を確認し、必要に応じて通常の名称・住所変更登記を申請します。 会社法人等番号を持たない法人はスマート変更登記を利用できないため、通常の変更登記の申請が必要です。 また、吸収合併などで所有者である法人そのものが変わる場合は、単なる商号変更とは異なります。スマート変更登記で所有権の移転まで処理されるわけではないため、別途、必要な登記を確認します。
法務局:会社の商号・本店を変更した場合の不動産登記申請書・記載例(PDF)
相続の場面ではどうなるか
当事務所によくあるご質問について、実務の観点から整理します。
亡くなった方の住所が古いままの場合
この場合は、住所変更登記ではなく相続登記で対応します。ただし、登記簿の住所と亡くなった時点の住所が違うと、同一人物であることを証明する書類(住民票の除票や戸籍の附票など)が必要になります。古い相続では、この書類が保存期間を過ぎていて取れず、手間取ることがあります。
相続で不動産を取得したあとに引っ越した場合
ご自身が登記名義人になっていますので、住所変更登記の義務の対象になります。相続登記が済んだから終わり、ではありません。
所有不動産記録証明制度との関係
2026年2月から、亡くなった方名義の不動産を全国まとめて確認できる制度が始まりました。ただし、この検索は氏名・住所をもとに行われるため、登記簿の住所が古いままだと漏れが出ることがあります。住所を最新にしておくことは、将来の相続手続きの準備にもなります。
相続登記の義務化と比べると
2024年4月1日に始まった相続登記の義務化と、今回の住所・氏名(名称)変更登記の義務化。数字が似ているので、並べておきます。 下の図は、相続登記と住所・氏名変更登記の義務化の比較図です。
- 施行日は、相続登記が2024年4月1日、住所等変更登記が2026年4月1日
- 期限は、相続登記が原則「取得を知った日」などから3年以内、住所等変更登記が変更から2年以内
- 過料は、相続登記が10万円以下、住所等変更登記が5万円以下
相続登記の義務化については、実務の流れとつまずきやすい点を別の記事にまとめています。
相続登記申請義務化について|期限・相続人申告登記・過料までを1本で
費用の目安
個人の住所・氏名変更登記について、当事務所の報酬と実費の目安は、次のとおりです。
- 住所変更登記・氏名変更登記の当事務所の報酬は、5,500円(税込)から
- 住民票・戸籍の附票などの取得代行は、1通3,000円(税込)+実費
- 通常の変更登記を申請する場合の登録免許税(実費)は、原則として不動産1個につき1,000円
何度も引っ越されている場合はご注意ください。
登記簿の住所と現在の住所がつながることを証明する必要があるため、住民票の除票や戸籍の附票を、住所の変遷にさかのぼって集めることになります。通数が増える分、実費も手間も増えます。 検索用情報の申出や法人識別事項の申出、それに基づくスマート変更登記には、登録免許税はかかりません。司法書士に手続きを依頼する場合の報酬や資料取得の実費とは別の話です。 法人の商業・法人登記、法人の不動産の名称・住所変更登記、法人識別事項の申出を当事務所にご依頼いただく場合の費用は、必要な手続きを確認したうえでご案内します。上記の金額に、会社の商号変更・本店移転の商業登記の費用が含まれるわけではありません。 相続登記と、ご自身名義の別の不動産の住所変更登記などを併せて行う場合は、必要な書類をまとめて確認することもできます。
まとめ
住所変更登記の義務化は、単に「罰則ができた」という話ではなく、登記情報を最新に保つ流れが強まった、ということです。 個人の方は、登記簿の住所・氏名が現在のものと合っているか、検索用情報の申出が済んでいるかを確認してみてください。 法人の方は、商号・本店が合っているかに加えて、不動産の所有権の登記に会社法人等番号が記録されているかを確認します。特に以前から所有している不動産では、法人識別事項の申出を検討しておくと、今後の変更手続きの負担を軽くできます。
初回のご相談は無料です
次のようなご相談が多いところです。
- 引っ越しを何度もしていて、登記簿の住所が合っているか不安
- 売却・担保(融資)・相続の予定があり、先に整えておきたい
- 「検索用情報の申出」や「スマート変更登記」をどう使うのが良いか迷う
- 会社の商号変更・本店移転をしたが、所有する不動産の登記も対応が必要か確認したい
- 以前から法人名義で持っている不動産について、法人識別事項の申出が必要か知りたい
事情をうかがいながら、必要な手続きと優先順位を一緒に整理します。
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