父の相続放棄をしたあとに、祖父名義の債務が見つかったら?

父の相続放棄をしたあと、祖父の借金が見つかったら、払わなければならないのでしょうか。祖父が父より先に亡くなっていれば、子は祖父の相続放棄はできませんが、祖父の借金を引き継ぐこともありません。

この記事の内容
・この記事が対象とするケース
・順番が違う場合(代襲相続のケース)
・結論 祖父の相続放棄はできないが、債務も承継しない
・なぜそうなるのか
・「放棄できない」の正確な意味
・請求が届いたときに確認すること
・迷うのは、自分がどのケースに当たるか
・あわせて読む
・まとめ 


この記事が対象とするケース

この記事では、次の順番で出来事が起きたケースを前提にしています。 

  • ①祖父が亡くなった
  • ②父が亡くなった
  • ④祖父名義の債務が見つかった 
  • ③子が父の相続放棄をした(家庭裁判所で申述)

この順番の場合、父の相続と祖父の相続が重なる再転相続の問題として整理します。

なお、父が祖父の相続をすでに受けていた場合(数次相続)でも、父の相続放棄をした子が、祖父の債務を引き継がない点は同じです。

順番が違う場合(代襲相続のケース)

死亡の順番が違うと、結論が変わります。 

もし、祖父より父が先に亡くなっている場合、つまり次の順番のケースは、話が別です。 

①父が亡くなった
②子が父の相続放棄をした
③祖父が亡くなった
④祖父名義の債務が見つかった 

この場合、子は祖父の代襲相続人として、祖父の相続に直接関わる立場になります。そのため、祖父の相続について、改めて相続放棄を検討する必要があります。

下の図は、この記事のケースと、順番が違うケースを並べたものです。 

  • 祖父が先に亡くなったケース(この記事):子は祖父の相続放棄はできないが、祖父の債務も引き継がない
  • 父が先に亡くなったケース(代襲相続):子は祖父の代襲相続人になり、祖父の相続について、あらためて相続放棄を考える 

 この記事では、①祖父死亡→②父死亡→③父の相続放棄→④祖父の債務発見、という順番のケースを扱います。父より祖父が後に亡くなった場合(代襲相続のケース)については、次の記事で整理しています。

親の相続を放棄しても、祖父母の財産は受け取れる?代襲相続のルール 

結論 祖父の相続放棄はできないが、債務も承継しない 

すでに父の相続放棄をしている場合、子は原則として、祖父の相続放棄をすることはできません。 

ただし、ここが重要です。 

祖父の相続放棄はできない。しかし、祖父の債務を承継することもない。 

「放棄できないのに、借金も負わないの?」と思われるかもしれません。でも、理由はシンプルです。

なぜそうなるのか 

相続放棄をすると、その相続については、初めから相続人ではなかったものとして扱われます(民法939条)。

父の相続放棄をした子は、父の相続人ではなかったことになります。 

子が祖父の相続に関わる立場は、父の相続人であることを前提にしています。ところが、父の相続放棄によってその前提がなくなるため、子は父を通じて祖父の相続について関わる立場を失います。 【本文】 その結果、次の2つが同時に成立します。

 【箇条書き】※2行を選択して箇条書きの書式を当てる。各行の「:」の前だけを太字にする 

  • 祖父の相続放棄:できない。父の相続人としての立場を失っているため、祖父の相続について判断する地位がない
  • 祖父の債務の承継:しない。父の相続人でもないため、父を通じて祖父の債務を引き継ぐことがない 

最高裁判所昭和63年6月21日判決も、親の相続を先に放棄した子は、祖父の相続について承認も放棄もできなくなる、としています。 

「放棄できない」の正確な意味 

「祖父の相続放棄ができない」という表現は、誤解を生みやすいです。 

これは、祖父の相続を承認したことになるという意味ではありません。

「祖父の相続放棄ができない」=「祖父の借金を払わなければならない」ではありません。正確には、「祖父の相続について判断する法律上の立場がない」という意味です。 

つまり、父の相続放棄をした子は、祖父の相続について、次のように整理されます。

  • 財産をもらう立場でもない
  • 債務を負う立場でもない
  • 相続放棄をする立場でもない 

請求が届いたときに確認すること 

祖父名義の債務について通知や請求が届いた場合、何も確認せずに支払ってしまうのは避けたほうがよいです。支払いをしてしまうと、事情によっては余計なトラブルになることがあります。 

まずは、次の点を確認することが大切です。

  • 父の相続放棄が受理されているか
  • 祖父が亡くなったとき、父が相続人の立場だったか
  • 父が祖父の相続について承認・放棄をしていたか
  • 請求が誰に対して、どの立場で届いているのか
  • 古い債務の場合、時効の問題がないか 

また、債務だけでなく、祖父名義の不動産や預貯金などが後から見つかる場合もあります。その場合も、父の相続放棄をしている子は、原則として、父を通じて祖父の遺産分割協議に参加することはできません。祖父の相続について遺産分割をするのは、父を相続した人になります。 

迷うのは、自分がどのケースに当たるか

このケースの答えは、はっきりしています。父の相続放棄が受理されていれば、子は祖父の相続放棄をあらためてする必要はなく、祖父の債務を払う必要もありません。 

本当に詰まるのは、手元の情報だけでは、自分がどのケースに当たるのかが分からないことです。祖父と父の死亡日、父の相続放棄が受理されているか、請求が誰に、どの立場で届いているのかを、戸籍と書面で確かめる必要があります。 

分かれ目は、祖父と父のどちらが先に亡くなったかです。祖父が先なら、この記事のケースです。父が先なら代襲相続になり、祖父の相続について、あらためて相続放棄を考えます。 

全体の流れの中でいまどこを考えているかは相続の道筋地図で、似た状況でほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例で確かめられます。 

相続の道筋地図 

相続の判断例

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数次相続と再転相続の違い|相続が続いたときに何が違うのか 

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 まとめ 

①祖父死亡→②父死亡→③父の相続放棄→④祖父の債務発見、という順番のケースでは、次のように整理できます。 

  • 祖父の相続放棄はできない:父の相続人としての立場を失っているため、祖父の相続について判断する地位がないからです
  • 祖父の債務も承継しない:父の相続人でもないため、父を通じて祖父の債務を引き継ぐことがないからです
  • 死亡の順番が異なる場合:祖父より父が先に亡くなったケースは、代襲相続の問題になり、結論が変わります

相続は、誰の相続なのか、どの順番で起きたのか、どの立場で関わっているのかによって、結論が変わります。特に父の相続と祖父の相続が重なる場面では、早めに全体の関係を整理することが大切です。

父の相続放棄をしたあとに、祖父名義の通知や請求が届いた段階でも、ご相談いただけます。初回のご相談は無料です。


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