兄弟姉妹が相続人になると、戸籍収集が一気に大変になる理由|広域交付で取れない・どこまで遡る?
兄弟姉妹が相続人になると、必要な戸籍は被相続人だけでなく、父母それぞれの出生から死亡までに広がります。ほかにお子さまがいないかを確かめるためで、しかも兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れません。
相続人が「配偶者と子」なら、戸籍は比較的まっすぐたどれます。ところが、相続人が兄弟姉妹(または甥姪)になると、戸籍収集の難しさが一段上がります。
理由はシンプルで、確かめる範囲が広がるうえに、広域交付で取れない戸籍が出やすいからです。この記事では、兄弟姉妹の相続で必要な戸籍の取り方を、実務の目線で整理します。
この記事の内容
・まず結論 必要な戸籍が「3層」になる
・なぜ父母の出生までさかのぼるのか
・父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血)の扱い
・広域交付で取れる戸籍・取れない戸籍 ・養子が絡むと、範囲はさらに広がる
・甥姪まで相続人になる(ただし一代限り)
・いちばん大事 適用されるのは「亡くなった時点の法律」
・相続登記の義務化とも直結します
・知らなかった兄弟姉妹が見つかったところで、止まりやすい
・あわせて読む
・まとめ
まず結論 必要な戸籍が「3層」になる
兄弟姉妹が相続人になるのは、ざっくり言うと「子も、親もいない」ときです。この「いない」を戸籍で確かめていくため、集める範囲が階層的に広がります。
下の図は、兄弟姉妹が相続人になるときに集める戸籍の3つの層と、広域交付で取れるかどうかを並べたものです。
- 第1層 被相続人の出生から死亡まで:お子さま(第1順位の相続人)がいないことを確かめます
- 第2層 父母それぞれの出生から死亡まで:父母が亡くなっていること(第2順位がいないこと)に加えて、ほかにお子さまがいないかを確かめます。この「ほかの子」が、被相続人の兄弟姉妹にあたります
- 第3層 兄弟姉妹全員の戸籍:ご存命なら現在の戸籍を。すでに亡くなっていれば、その方の出生から死亡までをたどって、甥姪を確かめます
なお、父母がすでに亡くなっていても、祖父母がご存命なら、祖父母が相続人になります(直系尊属は、親等の近い方が優先します)。兄弟姉妹に順番が回るのは、直系尊属が誰もいない場合です。
なぜ父母の出生までさかのぼるのか
「父母が亡くなったことを確かめるだけなら、死亡の記載がある戸籍で足りるのでは」と思われるかもしれません。ところが実務では、父母それぞれについて、出生から死亡までを集めます。
理由は、兄弟姉妹を全員洗い出すためです。被相続人にとっての兄弟姉妹は、父または母から見れば「子」にあたります。つまり、父母の戸籍を出生からたどらなければ、兄弟姉妹の全員は分かりません。
ここで出てきやすいのが、前婚のお子さまや、認知されたお子さまです。
ご家族が誰も知らなかった兄弟姉妹が、父母の古い戸籍から現れることは珍しくありません。その方も相続人ですから、遺産分割は、その方を含めて行う必要があります。
下の図は、父母の出生までさかのぼって兄弟姉妹が見つかる例を、家系図にしたものです(想定例)。
- 異母兄(父の前婚の子):父の前婚のころの戸籍をたどって見つかる、半血の兄弟姉妹です。この方も相続人です
- 姉と、先に亡くなった弟:父母の双方を同じくする、全血の兄弟姉妹です。弟の分は、その子(甥)が代襲して相続します
- この例の相続分:姉5分の2、甥5分の2、異母兄5分の1。半血の相続分は、全血の2分の1です
父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血)の扱い
父母のどちらか一方だけを同じくする兄弟姉妹を、実務では「半血の兄弟姉妹」と呼びます。父の前婚の子、母の再婚前の子などがこれにあたります。
半血の兄弟姉妹も、相続人であることに変わりはありません。ただし相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血)の2分の1となります(民法900条4号ただし書)。
相続分が変わるということは、全血か半血かを戸籍で確定しないと、分け方が決まらないということです。父母それぞれの戸籍を出生から集める必要があるのは、ここにも理由があります。
広域交付で取れる戸籍・取れない戸籍
戸籍の広域交付制度(2024年3月1日から)はとても便利ですが、請求できる範囲は、本人・配偶者・直系血族の戸籍に限られます。兄弟姉妹の相続では、この線引きがそのまま作業量に跳ね返ります。
- 取れるもの:父母・祖父母の戸籍は、直系尊属にあたるため、広域交付で請求できます。第2層はまとめて取りやすい、ということです
- 取れないもの:請求する方から見て兄弟姉妹・甥姪にあたる方の戸籍は、直系ではないため対象外です。第3層は、これまでどおり、それぞれの本籍地へ請求します
- 一部だけ取れるもの:被相続人ご本人の戸籍も、請求する方から見れば兄弟姉妹の戸籍です。父母の戸籍に一緒に載っていたころの分は、父母の戸籍として取れますが、結婚などで父母の戸籍を出たあとの分は、本籍地へ請求します
兄弟姉妹の人数が多いほど、本籍地も分かれます。ここが「一気に大変になる」いちばんの理由です。なお、相続人の住所を調べる戸籍の附票も広域交付の対象外なので、あわせて本籍地への請求になります。
広域交付の全体像と、窓口での頼み方は、次の記事で整理しています。
戸籍の取得と戸籍広域交付制度|相続で必要な戸籍・集め方・注意点をまとめて整理
養子が絡むと、範囲はさらに広がる
家族関係に養子縁組が入っていると、確かめる範囲がもう一段広がります。
- 父母が養子に入っていた場合:父母が養子縁組で戸籍上の親が変わっていると、養父母の側の死亡まで確かめる必要が出ることがあります
- 父母が養子をとっていた場合:その養子は、戸籍上、被相続人の兄弟姉妹になり、相続人調査に影響します
- 被相続人ご本人が養子の場合:実の父母と養父母の両方が直系尊属になり、実の側と養親の側の兄弟姉妹が、どちらも相続人になり得ます(特別養子は別の扱いです)
何を確かめるべきかは、戸籍をつないでみないと見えないことが多いです。迷ったら、早めに全体像を整理するのが安全です。
甥姪まで相続人になる(ただし一代限り)
兄弟姉妹が相続人になる場面では、その兄弟姉妹がすでに亡くなっていることもあります。その場合、現在の法律では、甥姪が相続人になります(代襲相続)。
ここで大事なのは、兄弟姉妹の代襲は一代限りという点です。
甥姪がすでに亡くなっていても、その子(甥姪の子)は相続人になりません。子や孫の代襲が世代を超えて続くのとは、扱いが違います(民法889条2項)。
ここまでの整理は、あくまで現在の法律を前提にした基本形です。そして次の点が、実務ではいちばん重要になります。
いちばん大事 適用されるのは「亡くなった時点の法律」
相続は、亡くなった時点の法律が適用されます。同じ「兄弟姉妹の相続」「甥姪が相続人」という話でも、亡くなった時期によって結論が変わることがあります。
前の章で「甥姪の子は相続人にならない」と書きましたが、これは現在の話です。古い相続では、結論が違うことがあります。死亡時点の法律がポイントになる論点は、次の記事で整理しています。
甥姪の子も相続人?|分かれ目は昭和56年1月1日。相続開始日で結論が変わります
相続登記の義務化とも直結します
兄弟姉妹の相続は、戸籍の範囲が広がりやすく、相続登記が済まないまま時間がたっているケースも少なくありません。昔の相続の登記を進める場面では、相続登記の義務化(期限)の全体像もあわせて確かめておくと安心です。
相続登記申請義務化について|期限・相続人申告登記・過料までを1本で
知らなかった兄弟姉妹が見つかったところで、止まりやすい
兄弟姉妹の相続で集める戸籍の答えは、はっきりしています。被相続人、父母それぞれの出生から死亡まで、そして兄弟姉妹全員(亡くなっていれば甥姪まで)。父母・祖父母の戸籍は広域交付でまとめて取れ、兄弟姉妹・甥姪の戸籍は本籍地ごとに請求します。
本当に詰まるのは、父母の古い戸籍から、ご家族の知らなかった兄弟姉妹が見つかったところです。前婚の子なのか、認知された子なのか、養子なのか。全血か半血か。その方が亡くなっていれば、その子まで。相続人と相続分が確定するまで、遺産分割にも相続登記にも進めません。
判断が分かれるのは、亡くなった日と家族関係(前婚・認知・養子)によって、どこまで戸籍を追うか、という点です。全体の流れの中でいまどこを考えているかは相続の道筋地図で、似た状況でほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例で確かめられます。
あわせて読む
- 最新の戸籍では見えない相続人:認知の子に気がつかないことが多い理由
- 相続人と連絡がとれないとき:戸籍の附票で住所を調べる方法
連絡がとれない相続人がいる場合の調査方法|まずは戸籍の附票で住所を調べる
まとめ
- 兄弟姉妹が相続人になるのは、子も、親(直系尊属)もいないとき
- 集める戸籍は、被相続人・父母それぞれの出生から死亡まで・兄弟姉妹全員の3層
- 父母・祖父母の戸籍は広域交付で取れるが、兄弟姉妹・甥姪の戸籍は本籍地へ請求する
- 甥姪までの一代限りは現在の話。古い相続は、亡くなった日の法律で確かめる
- 半血の兄弟姉妹の相続分は、全血の2分の1。養子がいると範囲が広がる
兄弟姉妹が相続人になって、どこまで戸籍を集めればよいか分からない段階でも、ご相談いただけます。初回のご相談は無料です。
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