相続開始後に預金を引き出したら?
相続が発生した後、被相続人(亡くなった方)の銀行口座に残っている預金を、相続人の一人が勝手に引き出した場合——これは相続トラブルの大きな火種になり得ます。 今回は、「相続開始後に相続人が預金を引き出したとき、遺産分割の対象になるのか?」という疑問について、法律の観点から解説します。
◆そもそも、遺産分割の対象になるのはどんな財産?
遺産分割の対象となるのは、原則として次の2つの条件を満たす財産です:
●相続開始時(被相続人の死亡時)に存在すること
●遺産分割の時点でも残っていること
つまり、相続開始後に相続人の一人が預金を引き出してしまうと、形式上その預金は「すでに存在しない財産」とみなされ、通常の遺産分割の対象から外れてしまいます。
図解:相続開始後に相続人が預金を引き出したら…
◆他の相続人が同意している場合
相続人の1人が預金を引き出したとしても、他の相続人全員がその金額を遺産に含めて分割することに同意すれば、 そのお金は「みなし遺産」として遺産分割の対象になります。 これは、2018年の相続法改正で新たに明文化されたルールです(民法906条の2 第1項、第2項)。
ただし、
財産処分をした相続人がその使用を認めない場合で、相続人の自己使用の証拠が明らかでなかったり、使用は認めているが使用額に争いがある場合などは、
→「みなし遺産存在確認の訴え」
→不当利得返還請求/損害賠償請求
などの法定手段が必要となります。
◆遺産分割の対象とならない場合もある
被相続人のために使った場合(例:入院費)、または相続人全員のために使った場合には、そもそも遺産分割の対象に含めないことも可能です。 ただし、「誰のための支出だったか」が曖昧なことが多く、トラブル防止のためには以下の対策が有効です。
✅預金を引き出す前に 他の相続人の同意をとる
✅領収書や記録を残しておく
✅必要があれば専門家(司法書士・弁護士)に相談する
なお、葬儀費用は誰が払うのかについては、基本的には喪主負担と考えられているので、相続財産から支払う場合には相続人全員の同意があるか、被相続人が生前に葬儀に関する契約をしているか、生前の委任又は遺言で葬儀費用の支払いについて決めている等が必要となります。ご注意ください。
相続開始後の引出し預金の相続税について確認したい方はこちらをご参照ください。
0コメント