税金の答えに、家族を合わせない|相続税・自宅・遺産分割・遺留分を、どの順番で考えるか
相続税が一番安い分け方が、その家族にとって一番よい分け方とは限りません。税額の試算から始めて、そこから何を整理していくのか。相続の相談で私が見ている順番をお話しします。
相続のご相談では、「相続税が一番安くなる分け方はどれですか」という話になることがあります。相続税は、分け方を考えるうえで欠かせない情報です。だからこそ、税額の試算は最初に行います。
そのうえで、私はいつも同じことを申し上げます。税金の答えに、家族を合わせるのではありません、と。
この記事の内容
・税額の試算から、相続の整理が始まる
・税額の順位と、家族にとっての順位は入れ替わる
・この考えに至るまで
・資産形成ゴールドオンラインで連載を始めました
・家族に合った答えを、一緒に考える
税額の試算から、相続の整理が始まる
相続税がかかる可能性がある相続では、まず税理士と連携し、試算を依頼します。1次相続で誰が何を取得するか、2次相続まで通算すると税額がどう変わるか、小規模宅地等の特例をどこで使える可能性があるか。税額の判断は税理士の領域です。
私は司法書士・相続アドバイザーとして、そこから先の整理を担います。返ってくるのは「その分け方をしたら税額はこうなる」という数字です。どの分け方を選ぶかは、その数字を出発点にして考えることになります。
そして、材料が出そろったときに、税額の順位と家族にとっての順位が一致しないことがあります。相続実務に30年以上携わってきて、この場面に何度も出会いました。
税額の順位と、家族にとっての順位は入れ替わる
順位が入れ替わるのは、次の4つの場面です。
下の図は、4つの場面を、税額の試算で見るものと、分け方を決めるときに見るものに分けて並べたものです。
順位が入れ替わる4つの場面
- 相続税評価額と、時価――相続税は路線価などをもとにした評価額で計算しますが、遺留分では実際の価値、つまり時価が問題になります。同じ自宅を、二つの違うものさしで測ることになります。
- 2次相続と、そのさらに先――相続対策は1次相続と2次相続までで考えるのが一般的です。しかし自宅のように価値の大きな財産では、その次の相続まで見ておく必要があります。実家の承継は、一代では終わりません。
- 制度上の有利と、身分行為の重さ――孫を養子にすれば税務上有利になることがあります。けれど養子縁組は、氏名や戸籍、家族関係に影響する身分行為です。制度が使えることと、その家族が受け入れられることは別の話です。
- 数字の正解と、家族の納得――誰が実家に住むのか、誰が管理するのか、誰が「自分は蚊帳の外だった」と感じるのか。納得のないまま決めた分け方は、手続きが終わっても関係の中に残ります。
この4つを、実際のご相談に沿ってもう少し詳しく整理した記事があります。
相続税が一番安い分け方を、あえて選ばなかった|税額だけでは決まらない4つのズレ
この考えに至るまで
司法書士として独立する前、税理士事務所の相続税部門に勤めていました。相続税の計算がどう組み立てられ、どこで金額が動くのかを、実務の中で学んだ時期です。数字の重みは、そこで身についたものだと思います。
その後、相続の仕事を続けてきた途中で、私自身も、親族間で話し合いがまとまらない相続を経験しました。制度の知識があっても、それだけでは進まないことがある。当事者になって、はじめて分かったことでした。
法律と税金、これからの暮らし、そして家族それぞれの想い。この4つを合わせて考える。私が「心を軽くする相続」と呼んでいるものは、そこから出てきた言葉です。
資産形成ゴールドオンラインで連載を始めました
2026年8月から、幻冬舎グループの「資産形成ゴールドオンライン」で連載が始まりました。タイトルは「心を軽くする相続の道しるべ-司法書士・相続アドバイザーの相談ノート-」です。
実際のご相談をもとに、相続で判断が分かれた場面を取り上げていきます。このホームページでは考え方を整理していますが、連載では、具体的な金額を示しながら、その判断がどう働いたのかをご紹介します。
第1回(2026年8月5日掲載)は、相続税が約760万円安くなる分け方がありながら、あえて別の道を選んだご相談です。自宅の相続税評価額と時価の差、そして次の世代の遺留分をどう見たかを整理しました。記事本文は外部サイト(幻冬舎)でお読みいただけます。
「相続税が約760万円も安くなるのに、なぜ…?」大切な両親の実家<時価総額1億2,000万円>を、55歳長女が“あえて”相続しなかったワケ
★当事務所サイト内の連載一覧ページです。外部サイトではありません。
家族に合った答えを、一緒に考える
相続税、遺留分、不動産の時価、2次相続、そして家族の暮らしと想い。判断する人も分野もばらばらです。それを一つずつ並べ、家族が「これでいこう」と思える形にする。それが、私が「整理役」と呼んでいる仕事です。
税金の答えに、家族を合わせない。これは私の判断基準です。そして、整理を尽くした先で心が少し軽くなること。これが、ご相談いただいた方へのお約束です。この2つは、同じことを別の側から言っているのだと思っています。
なお、税額の試算や申告は税理士と連携します。争いの代理や交渉が必要になる場合には、必要に応じて弁護士をご紹介します。その手前の、事実関係と資料の整理は当事務所でお手伝いします。誰が何を判断するのかを分けたうえで、相続全体の道筋を整えていきます。
その道筋には、いつ、誰に、どのように伝えるかも含まれます。順番を決めた後には、必ずこの問題が続きます。
相続は「何をするか」だけでは決まらない|いつ・誰に・どう伝えるかまで考える
相続の相談は司法書士と税理士のどちらへ?|それぞれのメリットと注意点
初回のご相談は無料です
自宅の時価、将来の遺留分、2次相続、ご家族の想い。税額の試算は税理士と連携しつつ、それらを並べて、無理のない分け方を一緒に整理します。
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